循環器疾患の治療は薬物療法からカテーテル治療、弁置換術など、多岐にわたります。
特に薬は種類が多く、禁忌も多いため国試対策をするうえで苦手意識を感じやすい分野だと思います。
そこでこの記事では、循環器疾患(心不全・虚血性心疾患・不整脈)を「治療」に絞ってまとめていきたいと思います。
心不全
厳密には心不全は疾患名ではありませんが、総論的な話として心不全の治療についてまとめます。
急性心不全
急性心不全の治療のポイントは、「クリニカルシナリオ(CS)」に基づいて行われるということです。
CS2:100mmHg≦sBP≦140mmHg➡硝酸薬、利尿薬、NPPV
CS3:sBP<100mmHg➡輸液、強心薬、血管収縮薬
CS4:急性冠症候群➡急性冠症候群の治療(後述)
CS5:右心不全➡利尿薬、強心薬、血管収縮薬(sBPに応じて使い分ける)
慢性心不全
RAS阻害薬、β遮断薬(∵心筋リモデリング抑制効果を狙って)
虚血性心疾患
虚血性心疾患と一言で言っても、病態は様々であり治療も異なります。
労作性狭心症
胸痛+➡硝酸薬の舌下投与
あわせて、
Ca拮抗薬:血管拡張作用
β遮断薬:心負荷↓
抗血小板薬:冠動脈硬化を遅らせる
根本治療はPCI(経皮的冠動脈インターベンション)とCABG(冠動脈バイパス術)
※3枝病変orLMT狭窄orPCI後再狭窄➡CABG選択
冠攣縮性狭心症(異型)狭心症
発作時➡硝酸薬
予防目的➡Ca拮抗薬
β遮断薬は攣縮を誘発するため禁忌!
急性冠症候群(ACS)
不安定狭心症と急性心筋梗塞を合わせてこう呼びます。
不安定狭心症
労作性狭心症の治療に準ずる(硝酸薬、Ca拮抗薬、β遮断薬、PCI/CABG)
急性心筋梗塞(AMI)
急性期➡MONA(モルヒネ・酸素・硝酸薬・抗血小板薬[アスピリン])・抗凝固薬[ヘパリン]
血栓による閉塞➡ウロキナーゼ、t-PA
再発予防➡抗血小板薬・スタチン
根治術:PCI/CABG
不整脈
不整脈は心電図の解釈も大変な上、病態に合わせて治療も多彩なので、根気のいるところです。
まずはじめに総論的事項として「抗不整脈薬のWilliams分類」をまとめておきます。Williams分類とは、抗不整脈薬をその作用で分類したものです。
Ⅰa群:キニジン、プロカインアミド、ジソピラミド
Ⅰb群:リドカイン
Ⅰc群:フレカイニド、ピルジカイニド
Ⅱ群:β遮断薬:プロプラノロール
Ⅲ群:Kチャネル遮断薬:アミオダロン
Ⅳ群:Ca拮抗薬:ベラパミル、ジルチアゼム
William絶対鍋持ってなさそうですけどね。
発作性上室性頻拍(PSVT)
房室伝導抑制を狙って➡迷走神経刺激、Ca拮抗薬、β遮断薬、ジギタリス
除細動➡ATP急速静注(気管支喘息患者には禁忌!)、カルディオバージョン
根治術➡カテーテルアブレーション
気管支喘息患者にATP静注は気管支攣縮のリスクあり。
心房粗動
薬物治療:Ca拮抗薬、β遮断薬、ジギタリス
除細動➡カルディオバージョン
根治術➡カテーテルアブレーション
心房細動(AF)
治療は多彩ですが、目的と対応させることが重要です。
リズムコントロール目的➡Ⅰa群orⅠc群の抗不整脈薬
レートコントロール目的➡β遮断薬、Ca拮抗薬、ジギタリス
カテーテルアブレーション➡肺静脈の付け根を焼灼
抗凝固療法➡ワルファリン、DOAC
明らかな原因(MS、MR、ASDなど)がある場合➡原疾患の治療
心室頻拍(VT)
基本はリドカイン(Ⅰb群)、プロカインアミド(Ⅰa群)、アミオダロン(Ⅲ群)
pulselessVT➡胸骨圧迫+除細動
持続性VT➡除細動器植え込み
心室細動(VF)
心電図でVF検知➡ただちに除細動!
VF既往(+)➡除細動器植込み
WPW症候群
無症状➡経過観察
PSVT(発作性上室性頻拍)やPAF(発作性心房細動)をきたすため、それぞれに準じた治療を行います<それぞれの治療は上記参照>
※偽性VTにCa拮抗薬、β遮断薬、ジギタリスは禁忌!
根治➡カテーテルアブレーションによるKent束焼灼
Brugada症候群
VT、VFをきたす可能性があるので、
除細動植え込みの適応。
QT延長症候群
先天性➡β遮断薬(第一選択)+除細動植え込み(TdP予防)
後天性➡原因(薬剤・電解質異常)除去、発作時→硫酸マグネシウム、徐脈性不整脈→ペースメーカー
洞不全症候群
緊急時➡アトロピン、β遮断薬、一時的ペーシング
原因(薬剤等)への対応を行う。
失神(+)➡ペースメーカー植込み
房室ブロック
緊急時➡アトロピン、β遮断薬、一時的ペーシング
原因(薬剤等)への対応を行う。
MobitzⅡtype以上➡ペースメーカー植込み
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