安楽死と尊厳死はどう違う?
マッチングや医学部受験でも理解を求められることの多いのがこの「安楽死」と「尊厳死」だと思います。
安楽死
ただし、日本では原則的として法的に認められていません。
ちなみに、東海大学安楽死事件(1991年)に対する判決では、
②患者は死を避けられず、その死期が迫っていること
③患者の肉体的苦痛を除去・緩和するための方法を尽くし、その代替手段がないこと
④患者自身による安楽死を望む意思表示があること
の4要件を満たせば、違法ではないという結論が下されましたが、これまで認められた例はありません。
この4要件を満たす安楽死のことを、「積極的安楽死」とも呼びます。
尊厳死
こちらに関しては日本でも多く見られるものだと思います。
文字通り、「人間としての尊厳を保つために自然な死を選ぶ権利がある」という考え方に基づいており、QOLを重視する流れからこの権利が求められるようになりました。
尊厳死を「消極的安楽死」と呼ぶこともあります。
安楽死と尊厳死の区別すべきポイント
大きく違うのは、「目的」と「死の迎え方」です。
安楽死:「患者の苦痛からの解放」
尊厳死:「尊厳をもって自然に死を迎えたい」という希望をかなえる
安楽死:「薬物などによって人為的に死をもたらす」
尊厳死:「人工的な延命措置をやめ、自然な死を迎える」
ALS患者の嘱託殺人の件は?
2020年7月23日、「ALSの患者に依頼を受け、京都市の自宅に出向いて医師が薬物を投与して殺害した」というショッキングなニュースが流れ、世間でも大きな話題となりました。
今回の件については、医師と患者が知り合ったのはあくまでSNS上であることや、医師がもともと厚生労働省の医系技官であるという点、そして、現金100万円を受け取った疑いがあるという点がなかなかイレギュラーであり、話は単純ではありません。
ただ、医師のやったことが法的に違法であることは明らかであり、医師の行為自体は糾弾されなければならないのは間違いないと思います。
今回の事件に関しては「悪質」な印象が否めないですが、では「安楽死=絶対的悪」なのかという点については議論の余地があります。
現に、ベルギーやオランダ、そしてアメリカの一部の州など、安楽死が合法とされている地域はあり、「患者が安楽死を望むがために、安楽死が合法である州に移住した」という例もあるようです。
注目すべきは、予想以上に「これ以上生きるのが精神的に苦痛だから早く死を迎えたい」と感じている患者がいるということです。
「死を積極的に手伝うのは倫理的にありえない」という意見は一理ありますが、「こんな状態なら死んだ方がマシだ」と死を切望する人がいるという事実があり、これに対してそれは間違いだと言って耳を傾けないのも、もしかすると私たちのエゴなのかもしれません。
そうした人がいるという事実にもきちんと目を向けた上で、安楽死に対する議論がより活発になり、今回のような悲惨な結末が二度と起こらないことを望みます。
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